top of page

イギリス式、フランス式、ロシア式、皿持ち式、シェイク式
西洋文化から伝わったサービスの形式は、今や西洋のものだけではありません。世界各国でその文化や食が一般化しています。料理の提供方法には文化やその時代背景が大きく反映され、変化を伴います。時代によって変更していくことも必要だと言えるでしょう。 王侯貴族の時代におけるサービスは、今のレストランというものが存在せず、想像を超えたサービスタイルでした。かといってその文化がまったく途絶えたわけではありません。今のレストランでもそのサービスが随所に時代の流れを受け継いで残っているのです。 ジャン・クロード・ブリナ氏(フランスのサービスの長:レストラン タイユヴァンのオーナー)の「レストランサービスは文化そのもの」という言葉も納得できるでしょう。つまり、現代において大切なことは、各時代によって作られてきたサービススタイルの、どのスタイルを取り入れるかということです。それは、肉料理をプレート式でサービスした後、 ソースのみをイギリス式でサービスすること等、どう融合させるかが重要です。したがって、まず現在に至るまでの歴史的サービススタイルの形式を知り、さらに自店のサービスがどんなスタイルであるかをスタッフ全員が認識することが大切です。 サービスの形式は古い時代から順に、メのサービス→古典的フランス式サービス→ロシア式サービス→レストランのフランス式サービス、レストランのイギリス式サービス、レストランのロシア式サービス(ゲリドンサービス)→皿盛り式(現代主流になっているスタイル)→シェイク式(これは各時代のサービスのデメリットをできるだけ省き現代風にアレンジさせたもの)となり、 ここでは各形式の要点を説明します(以下は、現代のサービスとは異なったスタイルです)。

1. 「メ」のサービス
レストラン誕生前に中世から長く続いたスタイルです。 「メ=Mets」というこの料理一般を指す名詞は、城の主人役がもてなす食事のスタイルをそう呼んでいました。この時代にサービス人の文献はみあたりませんが、サービスを担当するのは貴族たちの仕事でした。 中世を代表する有名な料理人はタイユヴァン(本名:ギョームティレル)、食事のスタイルは、テーブルをはさみ向き合いながら食べるのでなく、全員が片面に座って食べます。料理はテーブルにのせるだけ、おおよそ食べ終わるとすべて片づけられ、 また別の料理が一斉にテーブルにのせられ食べるというものです。それを何回も繰り返す贅沢な食卓のスタイルでした。しかも料理が再度出てくる間にはアントルメ「entremets」と呼ばれる幕間ショーを指すものがありました(芸、歌、踊りなど)。 メとメの間「entre」は、現在ではフランス語の前菜(アントレ)の意味に繋がっているのかもしれません。当時フランスではカトラリーを使わず手づかみで食していました。贅沢といっても中世初期は、現代からみれば質素だったのです。

2. 古典的フランス式サービス
大皿料理をテーブルにのせるだけというスタイルは中世と変わりませんが、テーブルを囲むということが「メ」のサービスと違っていることと、 テーブル上が格段と華やかになったことがあげられます。中央には位の一番高い人が座り、その隣から順に階級の高い人を座らせて、 端の席に向かうほど身分が低くなり、料理の品数も少なくなります。要するに階級社会を象徴するような食卓です。 味覚より視覚の美しさが優先されていたせいか、テーブルの華やかさやサービスも洗練されていきました。同じ時代、 数日かけて行なわれる盛大な宴会はかなり豪華で(食事を見ながら花火をあげることもあったそうです)、 この時代辺りからサービスの責任者が食事会の総指揮をとる存在とされてきました。その時代のサービス人の代表的な人物は「L.S.R」と記され正体は不明。 あの有名な「フランソワ・ヴァテル」(1653年の話)が当時メートル・ドテルだった人物に料理長として雇われていることからも分かります。 古典的なフランス式サービスは徐々に洗練され、18世紀には、あのヴェルサイユの宮廷生活に見る贅沢の頂点へと向かいました。 宮廷でのサービスは貴族のみが軍隊式に役割を与えられていて、それは名誉とされていました。サービスの指揮は“メートル・ドテル”がとり、 他に肉切り専門の係“メートル・エキュイエ”や“メートル・トランシャン”、その下に部下がつきました。国王の中には“メートル・ドテル” よりクラスの高い呼び名を持つ最高責任者を置く王もいました。その最高責任者の呼び名は“グラン・メートル・ドゥ・ラ・メゾン・デュ・ロワ”だそうです。 もともと主人役である国王は肉料理のデクパージュ(肉の切り分け)などを行っていました。これは武器使いの腕前を披露したためです。 デクパージュはその王様の代役をとるという名誉なことなのです。また、最初のワインを注ぐのも主人役の役目でした。 この時代のワインのサービスというと「ラフレシソワール」(ワインとグラスを置くもの)から取り出したグラスに注いだワインを一気に飲み、 元にもどすというもので、このようなスタイルが礼儀とされていたのです。18世紀のフランスではまだグラスが多様化してなかったのも理由です。 このようなフランス式サービスがヨーロッパ中の貴族社会に取り入られたのはなぜでしょうか。 それは規則と上位権(階級)という面で旧体制下の社会を反映した方法だったからです。 今のフランスでビストロレベルの店から高級レストランまでのサービス人、お客様も含めて全員が座席にこだわりを持っているのはこうした歴史的背景からくることを知れば納得できます。 そこには階級社会(クラス)が残っているからなのです。家庭でもクリスマスに鳥をさばくお父さん、パーティーでコルクをぬく男性の姿、 誇らしげにしている姿など、すべて当時の文化の面影が残っているのです。

3. ロシア式サービス
19世紀、フランス美食の黄金時代です。このフランス革命後の同時期にレストランやカフェがもの凄い勢いで出店していた中、1810年、 ロシアのクラキンヌ王子がパリ近郊のクリシーで、今までのフランス式と異なる給仕のスタイルを考案しました。 今までのフランス式サービスのいくつかの問題や疑問点、例えば料理が乾いてしまっても冷めてしまっても、 視覚を楽しむため全ての料理がテーブルの上に並べられるのを待ち、揃った時点でようやく食べ始めること、また卓上に置かれた大皿料理の食べた量に関係なく、 食事の料金は皆一緒というような不平等がありました。それらを解決したのがロシア式サービスです。 一品ずつ好きなものを順番に食べることができる自由なスタイルです。それにより、熱いものは熱いうちに食べられるようになり、 金銭に関しても自分が食べたものだけを支払えるようになりました。 しかしもう一方では、ブルジョワ勢が綺麗に盛られた大皿料理とその豪華さを求め、レストラン以外の場所でフランス式を吹き返していったのです。 2つのスタイルが平行する中、レストランは一段と洗練されたロシア式サービスが定着していきます。塊の肉であればゲリドンで切り分けられ、 個々に均等にテーブルに並べられることになったりと、卓上に並ぶ料理への視覚重視の考えから、初めて味覚の素晴らしさを優先するという考えに変わったのです。 ただし、ロシア式のサービスにおいても、冷製のオードヴルやデザートなどはフランス式のスタイルが残されました。 こうした経緯で生まれたロシア式サービスは現代においてもその平和主義の考えがレストランサービスの基本となっています。 このスタイルを広めた中でもユルバン・デュボワ(料理人)の功績は大きいと思います。 この後、調理科学の発達を迎え、19世紀の終わりには観光旅行が生まれました。南フランスでは豪華ホテルが立ち並び、この時期の高級ホテルは「パラス」と呼ばれました。 フランスのレストランではロシア式サービスが華麗さを競い合いました。そしてその時代のマナーがフランス式テーブルマナーとして国際的モデルとなっていったのです(今のテーブルマナーの基礎)。 これら過去のサービス形式「フランス式サービス」、「イギリス式サービス」、「ロシア式サービス」を整理し現代のレストランに当てはめ、 3つのレストランサービススタイルに分類した人物がルイ・レオプソ教授(ニース・ホテルスクール教授)です。誰も異論のない内容だったのかは定かではありませんが、 その整理された内容を現代に合わせまとめました。

4. レストランのフランス式サービス
基本の内容はお客様が自分で選び自分の皿に取るサービスで、パンなどは手で取っても構いません。 プラッターに料理をのせている場合はプラッターの上にシルバーをのせてお客様に取ってもらいます。
<利点>(1)お客様が料理を自由に選択でき、量も自身で調整できる。(2)サービス人は、お客様とのコミュニケーションがとれる。
<欠点>(1)サービスに時間がかかる。(2)プラッターなどを持つ体力が必要でもあり、場所も取る。 (3)お客様には不慣れな形式でもあるため羞恥心が沸き、食事の場が円滑に進まない。(4)サービス人はとっさに起こるお客様のハプニングに対応できないことがある。

5. レストランのイギリス式サービス
バンケット式と呼ばれるこのスタイルは結婚式などの大人数に最適です。基本の内容はプラッターにのせ、盛られている料理を先に出している皿の上にサーバーで盛りつけます。
<利点>(1)サービスが早く提供できる。(2)お客様とのコミュニケーションがとれる。(3)清潔感がある。
<欠点>(1)技能の高いサービスが必要、料理の温度管理が難しく、圧迫感も大きい。(2)とっさに起こるお客様のハプニングに対応できないことがある。

6. レストランのロシア式サービス(ゲリドンサービス)
基本の内容はプラッターに食材や素材を用意し、お客様の前でゲリドン上で料理を平等に取り分けるサービスです。1960年代から発達しました。
<利点>(1)料理が熱い状態でサービスできること。(2)視覚的なプレゼンテーション効果がある。 (3)臭覚的なプレゼンテーション効果がある。(4)グレードと高級感の演出ができる。(5)奉仕されたことによる満足をお客様に与えることができる。 (6)お客様とのコミュニケーションが密になる。(7)厨房作業の軽減化。(8)チームのモチベーション向上(一体化)。
<欠点>(1)提供できる料理の種類が限られ、料理がクラッシックになる。(2)広いダイニングスペース、技能の高いサービスチームが必要。

7. 皿盛り式
クロッシュサービスもこのスタイルと考えられます。ヌーベル・キュイジーヌと共に今の主流になっているサービスです。基本の内容は個別に皿に盛られた状態でサービスするシンプルなものです。
<利点>(1)とっさに起こるお客様のハプニングに対応できる。\(2)経験のないスタッフでもリスクが少なく、サービスが速く行える。 (3)料理に手間を掛けられ、料理も熱いうちに提供できる。(4)サービスの軽減化となり、料理のオリジナルな対応が多様にできる。
<欠点>(1)お客様とのコミュニケーションの希薄化。(2)プレゼンテーションの希薄化。 (3)厨房の料理に時間がかかり、お客様の待ち時間が長くなる。(4)チームのモチベーション低下。(5)高級感の欠如へと繋がる場合もある。

8. シェイク式
上記のベースをしっかりとおさえた上で現代のスペシャリストが取り組むものです。様々な今までのスタイルを組み合わせ、自由な発想から商品やサービスを提供します。 オリジナリティが重要なため、様々な研究や努力が必要とされます。今、世界中の多くの一流レストランが取り組んでいるスタイルです。

以上のようにサービス形式は様々ありますが、レストランサービスすべてに共通する基本的なサービスは以下があげられます(国際儀礼レベル)。

(1)姿勢良く、スマート&エレガントにサービスする。

(2)料理は熱いうちにサービスする。

(3)料理や飲料は左側からは左手(テーブルの配置に無理があったり、

   お皿を3枚以上持って運ぶ店ではこの場合にあてはまらない)、右側からは右手でサービスする。

(4)料理のプレゼンテーションは左から入る。

 (スープも食べるものとして捉えるため、左側からサービスする。)

(5)現代においては特に機敏な動きでサービスする。

サービスの歴史と給仕方法

Restaurant SerVice

レストランサービスについて

bottom of page